皆様、土地家屋調査士という国家資格をご存じでしょうか?
土地家屋調査士とは、不動産の登記簿(登記記録)の「表題部」の新設、変更・更正、閉鎖等の代理申請を行う土地建物の表示登記の専門家です。
我々土地家屋調査士が、相続の関係でお世話させて頂く場合で多いのは、相続人の間で土地を分けあう為の分筆登記を行う時や、相続税の物納の為の土地の境界確定測量、地積更正登記を行う時です。
この分筆登記・地積更正登記を行う上で、前提として通常境界確定測量を行わなければなりません。今回は、境界確定測量時に行う土地の境界線確認、いわゆる“境界立会”についてのお話をします。
一言で境界立会と言っても、十人十色ならぬ十筆十色であり、その土地が存在する地域の性質、境界線付近の建物や構造物の築造状況、隣接の方の性格やそれまでのお付き合いに至るまで様々な要素が混じり合っており、お隣さん次第で、平易に済むときもあれば、紛争や裁判になる時もあるといった具合です。
残念ながらお隣さんは選べませんので、適切な時期に境界確認を行うことも重要です。親子3代境界で揉めている地権者さんに出会ったこともあります。相続時に土地と共に“境界争い”も残すことにならないようにするのが理想です。
境界立会とは、隣接地の所有者もしくは管理者と現地で立ち会い境界線の確認を行うことです。つまり、財産である土地の境界線=範囲が現地のどの位置に存在するのかをお隣さんと確認をすることです。
確認が無事に終われば、境界を確認したことを証する書類(境界確認書)に署名・捺印をいただきます。
土地分筆登記・地積更正登記を申請する時は、通常その境界確認書を添付します。ということは、お隣さんの境界の確認承諾がないと分筆登記・地積更正登記を行うことが困難になるということです。
(万が一、境界確認承諾をもらえなくても、土地分筆登記・地積更正登記を行う方法もあります。それは別の機会にお話いたします。)
◆境界確定測量、分筆登記・地積更正登記の流れ◆
(1)隣接地挨拶
(2)基礎測量
(3)現地境界立会
(4)境界標識設置、実測、実測図作成
(5)境界確認書(境界を確認したことを証する書面)への署名・捺印受領
(6)法務局に分筆登記・地積更正登記を申請
境界立会の際、境界標識(石杭、コンクリート杭、プラスチック杭、金属標など)や境界を表す構造物(ブロック塀、石垣、用壁等)が現地に存在していれば、揉めるケースは少ないのですが、境界標識が無い場合や、境界を表す構造物の所有権が不明瞭な場合、構造物(埋設管、ブロック塀、石垣、建物等)が越境している、もしくはされている場合、容易に境界確認が出来ないことがあります。
わが国の領土は狭く、国民の土地に対する思い入れは、諸外国に比べてはるかに深いのが実情と思います。現状、土地は高価な財産であるため、所有者の権利意識は非常に高くなっています。さらに、住宅が密集することにより、近隣との日照や騒音や境界紛争などのトラブルも増えています。
この境界紛争の多くは、境界が不明なために起こっています。また、紛争になると最終的には感情論になってしまうのがほとんどです。お隣さんから境界立会を求められるケースも少なくありません。その時は「お互い様」と思って快く立会をしてあげた方が、後々ご自身に境界立会が必要になったとき、逆に快く行ってくれるはずです。
隣接からお願いされた境界立会で不安な時は、お気軽に土地家屋調査士にご相談ください。
日頃、隣接地の事でお悩みの方のお話をよく聞きます。足を踏んでいる人は踏まれている人の痛みは分からないものです。次代に紛争や遺恨を残さないように上手に管理していただきたいと思います。
<今回のレポート担当>
江藤土地家屋調査士事務所(福岡市博多区)
土地家屋調査士 江藤 剛 先生
趣味:美味しい物を食べること。福岡をこよなく愛すること。