今回は昨年4月に制度がスタートして以来、注目を集める教育資金贈与の特例についてお話します。この制度、親から子への教育資金贈与にも適用はあるのですが、多くは祖父母からお孫さんへの贈与に活用されています。
相続税の節税効果が期待できる制度で、孫を思う愛情と信託銀行等の営業力も手伝って、スタートから今年6月末の時点で5,000億円を超えるお金が贈与されたというから驚きです。このメルマガが配信される頃に発表される9月末までの調査結果では更に増加しているでしょう。
現行法では、適用できる期間が来年末までと近づいてきていることから、検討されている方も多いと思いますが、もう一度しっかりとメリットとデメリットを整理しておきましょう。
1.メリット
①相続税の節税効果が期待できる。
最大で1,500万円を無税で孫に渡すことができますので、通常の暦年(毎年の)贈与に比べ一回の贈与による相続税の節税効果は高いと言えるでしょう。また、暦年贈与を続けながら利用することもできます。
②使い道を限定できる。
贈与したお金は教育資金口座として管理されますので、例え自分が認知症になったとしても、贈与を受けた人以外の人に他の目的で使われる心配はありません。信託銀行等が出金を管理するため、使い道はお孫さんの学費などの教育資金に限定されます。
2.デメリット
①取消はできない。
一旦教育資金贈与をしてしまうと取消はできません。また、贈与を受けた人が30歳になった時点で使い切れず残った分は贈与税の対象になります。
②相続税の節税対策は不要だった。
相続税増税を見越して、教育資金贈与を利用したが、冷静に計算すれば、そもそも相続税の心配は無かった。ということもあります。相続税の試算を行った上で判断することをお勧めいたします。
③その都度贈与で十分だった。
元来、孫に対する教育資金をその都度出してあげた場合には、贈与税はかかりません。例えば、お孫さんが受験合格の報告に来た時に「おめでとう。入学金は私が出してあげるからしっかり勉強してね。」と、学費を負担してあげると贈与税はかからないわけです。
④払い出しが面倒だった。
金融機関によっては教育資金の払い出しは後精算のみの場合も。つまり自己資金で教育資金を払い、後からその領収証を送付するなどして払い出しを受けることになります。来店の要、不要も金融機関によって取り扱いが異なりますので、どの金融機関を使うのか選択は重要です。
相続税増税の影響もあり、益々利用者が増加することが見込まれる教育資金贈与ですが、必ずしもすべての皆様にとってメリットがあるわけではありません。老後に必要な資金も計算に入れ、十分に検討してから実行しましょう。