朝晩の気候も随分過ごしやすくなってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
今回のメルマガでは、税法上の“相続財産”と、民法上の“相続財産”の違いについて解説いたします。
同じ“相続財産”という名目でも、税法上の相続財産と民法上の相続財産では、具体的に含まれる財産の範囲が変わってきます。
そして、相続税の申告をする場合には『税法上』の相続財産を記載する必要がありますし、遺言書を書いたり、遺産分割協議をしたりする場合には、『民法上』の相続財産を対象とする必要があるのです。
では、ここで問題です。
旦那さんが亡くなったとき、奥さんが受け取る事になっている生命保険金(3,000万)は、相続財産に含まれるでしょうか?
答えは、
税法上 ・・・“みなし”相続財産として、相続財産に含める(相続税の課税対象になる)
民法上 ・・・“受取人固有の財産”であり、相続財産には含まれない
つまり、相続税の申告をする際には、生命保険金の3,000万は相続財産とみなされるので、申告書への記載が必要です。しかし、相続人同士で遺産分けをする場合には(民法上の話では)、奥さんがもらった3,000万は相続財産には含まれず(=遺産分割対象の財産とはならず)、奥さん固有の財産となるのです。当然、旦那さんが遺言書を作成する場合にも、生命保険金については特に記載する必要はありません。
では、もう1つ問題です。
山田家には、長女の優子さんと次女の良子さんがいます。姉の優子さんは結婚する際、お父さんからその資金として500万円を援助してもらいました。この500万はお父さんの相続財産に含まれるでしょうか?
答えは、
税法上 ・・・ 相続財産には含まれず、相続税の対象とはならない
民法上 ・・・ 相続財産の前渡しであるとして、相続財産に含まれる
この場合、500万は既に優子さんの元へ渡っているので、相続税法上はお父さんの相続財産には含まれません。この500万の援助は“贈与”とされ、贈与時に贈与税を課税することで税務的には完結したものと考え、相続税の課税対象からは外しているのです。(ただし、その贈与が相続開始前3年以内に為されていた場合は、相続発生時に相続財産に持ち戻して相続税を計算することになっています。)
しかし、この500万が民法上の相続財産にも含まれず、遺産分割の際に何にも考慮されないとしたら、結婚資金をもらってない次女の良子さんからすると、「お姉ちゃんだけずるい!」となってしまいます。
さらに、葬儀費用についても、
税法上 ・・・ 相続債務になる
民法上 ・・・ 相続債務にならない 等の違いがあります。
なぜ、このように税法上と民法上の相続財産に違いがあるのでしょうか?
税法では、相続財産の把握について、「相続税の担税力」に注目しています。つまり、「税金を払えるだけの財産をもらったのなら、それに応じて払ってください」というわけです。
これに対し民法では、相続人間の公平を図る事に着目しています。以前は家督制度があり、その家の長男が財産の全てを相続することとなっていましたが、今は違います。各相続人が、なるべく公平に財産わけを出来るような仕組みが用意されているというわけです(もちろん、相続人の間で全ての財産を誰か一人に相続させると決める事も出来ます。)
税法上の“相続財産”と民法上の“相続財産”。ちょっと難しいですが、遺言書を書く場合や遺産分割協議の際に参考にしてください。
難しすぎてよくわからない!という方は、ぜひ福岡相続サポートセンターへお問い合わせください。個別具体的に、アドバイスさせていただきます!