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生命保険と金庫株を使った納税資金対策

2021.05.10

1. はじめに

相続対策や所得税対策として不動産法人化後に法人の株主となった方や、事業会社を経営されてきた方で自社株をお持ちの方は、法人においても生命保険加入を検討されていますでしょうか?

相続対策には大きく分けて①争族対策、②節税対策、③納税資金対策があります。

本記事ではそのうちの一つである納税資金対策の一環として、法人株主だけが行える生命保険と金庫株を使った納税資金対策について解説していきたいと思います。

 

2. 金庫株とは?

金庫株とは、自分が所有している株式をその会社に買い取ってもらうことを言います。

会社が自分の株式を保有することで、「株式を会社の金庫にいれる」という意味で金庫株と呼ばれているものです。※正式名称ではありません。

金庫株は会社運営上様々な場面で活用されますが、今回は相続対策に絞った金庫株の活用方法について解説します。

 

3. 相続後に金庫株する税務メリット

非上場の株式は換金価値が低い割には相続税の評価額は高額になりがちです。

通常、相続開始前に金庫株を行うと「みなし配当課税」といって給与や不動産収入と合算されて累進課税の対象となります。最高税率55%(住民税10%込)なので金額が多ければ半分近くが税金となります。

しかし、相続で取得した株式をその相続人が金庫株を行うと、一定の要件を満たした場合は譲渡益部分に対して20%の課税だけとなります。

つまり、換金性があまりない株式を相続したとしても税金を効率よく抑えながら納税資金に当てることができるのです。

この特例をうけるためには下記の要件をみたさなければなりません。

 

①相続または遺贈により取得した自社株

相続開始後3年10ヶ月以内に譲渡

③相続税の負担があること

④非上場株式であること

⑤発行会社への譲渡

 

また、相続財産を譲渡することになるので相続税を支払って取得した株式を金庫株した場合は、相続税の取得費加算の特例も併用できますので手取り額が増える結果となります。

相続税の取得費加算の特例は、一次相続時にご自身が支払った相続税の一部を金庫株時の取得費にできるというものです。

 

4. 金庫株時の法務面のメリット

金庫株をするには法務面で下記の点に気をつけなければなりません。

①分配可能額・・・金庫株は配当と同じ性質のものなので会社法上の財源規制に注意しなければなりません。

②特別決議・・・実務上、「特定の株主からの取得」で対応することが多いので、その際は株主総会の特別決議が必要となることがほとんどです。

③売り主追加請求・・・特定の株主からの取得の場合は原則として全株主に売主追加請求権を行使できる旨を通知しなければなりません。他の株主から売主追加請求権が行使された場合は追加で金庫株をしなければならなく場合もあります。

 

5. 金庫株時の資金対策としての法人保険の活用

金庫株を行う際は当然ですが会社にお金がないと自社の株式を買い取ることはできません。

ない袖をふることはできません。

しかし、法人で余剰資金を金庫株の財源として法人保険に加入しておくことで法人の方で納税資金をためておくことができるようになります。

併せて金庫株だけでなく死亡退職金(相続税は500万円×法定相続人まで非課税)の財源としても生命保険に加入されることもお勧めです。

 

6. まとめ

いかがでしたでしょうか?
本記事では納税資金対策として金庫株と生命保険の活用について解説しました。
改めてポイントをまとめると下記のようになります。

①相続した株式を金庫株すると税金面で優遇を受けつつ納税資金を確保できる

②法人で保険に加入することになるので個人の手出しが少なくなる

③相続した株式の金庫株は税金面、法務面で要件が多岐にわたるので慎重な検討が必要

 

法人と個人を併せた対策を行うことでより良い相続対策が行えることになりますので詳しくは専門家にお尋ね下さい。

 

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筆者紹介

税理士法人 アーリークロス 副代表 相続・承継支援部長
小山 寛史

学歴 関西大学卒業 西南学院大学大学院卒業

国内最大手税理士法人にて資産税、事業承継案件を経験した後、国内中堅税理士法人にて資産税、事業承継、法人顧問など幅広く業務を経験。 税金面のアドバイスはもちろんのこと、クライアントの「想い」に寄り添った提案を心がけている。 特に不動産オーナーの相続対策については、「評価額圧縮」「遺産分割対策」「納税資金対策」「生前贈与対策」の4つの柱を軸に円満な相続ができるよう偏りのない総合的なアドバイスを行っている。 不動産オーナー向けのセミナーも多数開催。

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