「相続登記にもお金がかかるし、とりあえず問題ないようなので放っておいてます。」
「自宅は父名義ですが、母がそのまま住むので、相続登記は母が亡くなった時に行ないます。」
こんな言葉を、よく耳にします。
そもそも相続登記とは何かということを、ご説明しておきます。
相続登記とは、相続財産に土地や建物などの不動産がある場合に、登記簿上の名義を被相続人から相続人に変更するものです。登記簿上の名義人が不動産の所有者であり、不動産の売買等ではこの名義がとても重要です。相続の際に名義を変更しておかなければ、亡くなった方が所有者のままになってしまいます。
しかし、相続放棄や限定承認をする場合は相続発生を知った時から3ヶ月以内、相続税の申告は相続発生を知った日の翌日から10ヶ月以内という制限があるのに対し、遺産分割協議や相続登記には特に制限が設けられていません。
つまり、遺産分割協議や相続登記はいつ行なっても大丈夫ですし、行わないままになっていても罰せられたりすることはありません。 また、相続登記を行わなくても当面支障がないというのが現実ですので、手間とお金をかけてまで行なわなくてもいいだろうという気持ちになってしまうのでしょう。
では、相続登記をしなくてもよいのでしょうか?
ここで、登記をしないことのデメリットをご説明致します。
デメリットの一つは、実印や公的書類の必要性です。
不動産の名義変更を行なう場合、被相続人と相続人全員の戸(除)籍謄本・抄本や相続人全員の実印・印鑑証明が必要になります(遺言書がある場合や法定相続分通りの場合は異なります)。時間が経てば経つほど、必要な書類を他の相続人が揃えてくれず、思うように手続きができなくなることがあります。
せっかく相続した不動産が登記名義を変更しなかったせいで思う通りに処分できず、かえってお荷物になってしまうということもあるのです。
もう一つのデメリットは、相続人が増えるという点です。
時間が経つうちに、他の相続人が亡くなり、その相続人まで関わってくるようになるなど、時間の経過による関係者の増加・複雑化はよくあります。いざ不動産を売却しようと思って名義を変更しようと考えたときには、今まで会ったこともない親族が相続人として関わってくる、などということがあれば、手続きは大変面倒になります。
また、法定相続分は相続登記をしなくても第三者に主張することができますが、遺産分割協議で法定相続分とは異なる割合で分け方を決めた場合は、相続登記をしなければ第三者に主張することができないという点も注意が必要です。遺産分割協議で自分の持分が決まったからと言って、それで安心できるわけではないということです。
この点を考慮すると、必ず相続登記をしておきましょうと言わざるを得ません。
相続登記は確かにお金と手間がかかります。相続登記をしなくても、すぐに自分が困るようなことはほとんどありませんので、「お金と時間に余裕ができたら・・・」などと考えるのも無理はありません。
しかし、「当面は支障がないから・・・」と放置することが後々自分の首を絞めることがないように、できるだけ早いうちに相続登記を行ない、財産の所有者を明らかにしておくことをおすすめします。